「左官」という名称の由来については諸説ありますが、「平安時代に宮殿の営繕に携わった木工寮の属(さかん)である」とする説が有力と言われています。 古い文献では、「可部奴利(かべぬり)」「土工(つちのたくみ)」「壁塗」「壁屋」などとも呼ばれ、「左官」という名前が定着したのは元禄時代に入ったからのようです。
塗り壁の中でも白漆喰(しっくい)は、城郭の建築を中心として全国に広まり、寺社仏閣や商家の土蔵などへ用途を広げいきました。 岩手県においても、藩政時代から明治・大正時代に建造された建物に、漆喰で仕上げられた壁を見る事が出来ます。盛岡の城下町や岩谷堂地区では美しい壁の土蔵が、気仙地区や一関地区では名工・気仙左官が手掛ける鏝絵(こてえ)が有名です。 (盛岡市北山地区で採れる壁土は、最高級とされる京都産のものに比肩するほど上質。という左官さんもいます) これらの貴重な建物に携わり、まちづくりを支えてきたのが地元の左官職人さんです。
現代では防火対策で塗り壁を施工することはなくなりましたが、塗り壁の持つ優れた特性を活かし、様々な建物に左官仕上げの壁が採用されています。 例えば、イメージ通りの店舗を作りたいと、デザイン能力と技能を併せ持つ左官の名工を指名するオーナーが増えています。
【わが社の取り組み】 小原商店は昭和8年の創業以来、「左官材料」を主な取扱品目として営業を続けてまいりました。左官材料は、土・ワラ・砂など、いわゆる自然素材が原料であり、日本の伝統的な建材として受け継がれております。
しかし、工期短縮かつローコストが求められる昨今の建設現場において、職人さんの経験・技術と乾燥時間が必用な左官材料の出荷量は、年々減少を続けており、左官職人さんの減少と高齢化も全国的な問題となっています。
一方、プラスチック廃棄物に起因する海洋汚染への対応や、化石エネルギーを極力使わない社会づくりの取り組みは、建築の分野にこそ求められています。
「作るとき・使うとき・捨てるとき」に環境負荷が少なく、再利用も期待できる左官材料、そして、この古くて新しい建材を自在に操る左官職人さんの技術は、今後その価値を高めていくことでしょう このような状況の中、私どもは長年左官材料を取り扱って来た経験をもとに、建物の長寿化への取組も進めております。
日本の建物の使用年数は世界を見回しても極端に短いことで有名ですが、「建物の利用価値を高めて長く使う」という発想が近年広がりを見せ、リノベーションにより古い建物が再生・活用される事例も増えてきました。伝統の技術を活かし既存建物を再生することで、建物の価値向上を目指してまいります。